「名探偵コナン」劇場版シリーズの「天国へのカウントダウン」の一つの名シーンとして、クライマックスでの灰原の計算により、爆発するビルからの脱出劇があります。
脱出するにあたって、灰原が隣のビルに飛び移るための計算を披露します。
リアルタイムで見ているときに理解するのはとても難しいですよね。紙にメモしながらじゃないとちょっと・・・(笑)
内容的には高校物理のレベルではありますが。
ところで、この脱出って実現可能なのでしょうか。気になったので、どんな数式なのか、また実際に可能なのかを検証してみました。
さらに、あまり触れられることのない、爆風による加速で足りるかについても考察してみました。
結論としては、爆風による加速で脱出は可能と思われます。
※ネタバレあり
クライマックスシーンの灰原の計算を確認
クライマックスの状況ですが、爆発から助かるためには、高低差20mで距離60mを飛び移らなければいけないというピンチを迎えています。
この条件を満たすためには、いったい、時速何kmで車を走らせる必要があるのでしょうか?
灰原が計算するシーンのセリフ
パーティー会場の車で脱出を図るコナンに対して、灰原は言います。
ビルの間は50メートル。飛び移るという事になれば、60メートルって所ね。隣のビルとの高低差は20メートル。地球上の物体は、空間では水平方向に同じ速度で進むけど、下向きには重力により、決まった割合で速度を上げながら落下して行くの
これは、上の図で示した内容を説明しています。小学生レベルの説明ではないですね。
たぶん、灰原は死を覚悟していたのでしょう。自分が小学生ではないことはバレても致し方ないって感じですね。
続けて灰原は、車が20メートル落ちるまでに何秒猶予があるかを説明します。
20メートル落下する時間を求める式は
t=ルートg分の2s
t=求める時間(秒)
g=重力加速度 9.80665m/secの2乗
s=落下距離 20m
これを式に当てはめると
2.02秒
落下までの時間は約2秒と灰原は言っています。
ここまでをまとめると、
落下するまでの時間は約2秒なので、2秒で60メートル進めることが可能な車の速度を求めればよい。となります。
そして、灰原は続けます。
つまり、20メートル落下するのに約2秒。2秒で60メートル進まなくてはいけない。てことは
ここでコナンが最後の台詞を奪い、続けます。
1秒で30メートル。時速に置きかえると、108km/hだ。
- 2秒⇒60m
- 1秒⇒30m
- 秒速30m⇒時速108km
つまり、時速108kmあれば、隣のビルへ届くようです。
灰原の計算はスタッフによって正しいかが確認されている
この計算は、天国へのカウントダウンの監督のこだま兼嗣氏の弟と青山剛昌先生の兄により、正しいと確認されているようです。
ここで登場する計算式は、機械関係の設計をやっているという、こだま兼嗣監督の弟さんに協力してもらったそう。さらに青山剛昌先生のお兄さんも科学者なので、計算式の確認をしてくれたそうですよ。#名探偵コナン #天国へのカウントダウン #金曜ロードショー pic.twitter.com/620grQa6ho
— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) April 23, 2021
この計算は、高校物理で習うレベルで、勉強していれば理屈はそれほど難しくはないと思います。ただ、紙などを使わずに頭の中だけで解くのは、大変ですね・・・
中学生のレベルでも距離と時間と速さの関係は習うと思います。
距離=速さ×時間
これです。この程度はまあすんなりわかると思います。ただこの式は速度が一定の場合です。
速度も時間とともに変化する場合があって、速度の変化度合を加速度といいます。高校物理では加速度の要素が加わります。
詳しい内容は省略しますが、当時の小学生などは到底理解できるものではありませんね。「速度 加速度 公式」などで検索すれば、詳細が見ることができると思います。
また、実際は空気抵抗の影響を多少受けるので微妙に変わると思います。が、わずか2秒の出来事なのであまり影響はないものと思います。
灰原の計算で隣のビルへの到達は実現可能か?
時速108km出せば、隣のビルに届くことがわかりました。ですが・・・
果たして、時速108kmだせるのか?
という問題があります。
しかし、残念ながら
「この会場の広さだと出せるスピードはせいぜい50,60km」
とコナンは言います。車のエンジンによる加速では脱出不可能なようです。ですが、コナンは爆風を利用して飛んでいく案を出します。
爆発と同時にビルを飛び出すことで、加速するというわけです。
成否のカギを握るのはタイミングね
と灰原が言うように、爆破と飛び出すタイミングをうまく合わせないと失敗してしまいます。
しかし、歩美ちゃんの特殊能力?で30秒を性格に数えて、タイミングよく飛び出すことに成功します。
灰原の計算は正しいが、爆風による十分な加速が必要
ところで、爆風による加速があったとして、時速108kmに届くんですかね?
あの状況では、爆風に頼るしかないからなのか、一切触れられていません。
仮にですが、爆風によって、時速150kmくらいになるとしたら、空気抵抗がどうとかあまり関係ないし、ビルを飛び出すタイミングもそこまでシビアではなくなるじゃないですか。
また、時速80kmくらいにしかならないとかだったら、爆破のタイミングを合わせるのがカギとか言って解決する問題ではなくなってしまいます。
だから、重要なのは爆風による加速がどれくらいなのかだと思ったんです。
時速108kmが爆風により出せるならば、届きそうなのはわかりましたが、そもそも爆風による加速がどれほどかを考える必要がありそうですよね。
まず、登場する高級車はフォードの名車「マスタング・コンバーチブル」で、重量は1740kgほどのようです。脱出時は子供5人と犯人の男1人がのっていますから、総重量は2000kgくらいでしょうか。
肝心のコナン映画で使われた爆弾の爆風がどれほどの風速をもつかですが、調べてもわかりませんでした。そりゃそうか・・・
参考までに、原発の爆風は秒速280mと言われているという情報を見つけました。
爆風による被害 - 広島市公式ホームページ|国際平和文化都市
秒速280mがどれほどか、ピンとこないので、台風の強さと比較してみます。
こちらのページによると強い台風が秒速50~60m/sで、秒速50m/sの場合は、たいていの木造家屋が倒れる。樹木は根こそぎになる。とあります。
木造家屋はマスタング・コンバーチブル(1740kg)よりもはるかに重いでしょうから、爆風が秒速50m/sくらいだったとしても、車に対しては、相当な加速要素になると思われます。
コナンによるとビル脱出時は時速60km程度なので、爆風による加速は時速48kmくらい必要となるはずです。
ビルの爆破はさすがに原発よりも弱いと思いますが、それでも、爆風が秒速100mくらいはあると仮定すると、時速108kmに足りない分の時速48kmくらいは、加速してくれそうです。
時速48kmは秒速に直すと13.33m/sです。秒速100mの爆風なら車の秒速を13mほど上げるくらいはできそうですよね。
詳しい計算は難しそうなので、やめておきます。興味がある人は考えてみてください(笑)
まとめ
「名探偵コナン」劇場版シリーズの「天国へのカウントダウン」のクライマックスの
脱出劇を検証してみました。
灰原の計算はリアルタイムで見ているときに、理解するのはとても難しいと思いますが、スタッフも確認しているようで、正しいようです。
さらに、あまり触れられることのない、爆風による加速で足りるかについても考察してみましたが、爆風による秒速はわからなかったものの、爆風による加速で脱出は可能に見えました。
灰原の計算のあたりは、物理を勉強している人にとっては面白いシーンだったのではないでしょうか。