「業火の向日葵ってアクション要素が多いよねー」
「ミステリー部分がいろいろ説明がなくて、なんだかよくわからない…」
劇場版名探偵コナン「業火の向日葵」について、このように言われているのをたびたび目にします。
実際に映画を視聴した人であれば、このような意見に賛同する人が7~8割はいるのではないでしょうか?
どうしてこうなったかというと、業火の向日葵の脚本担当の櫻井武晴氏は某インタビューで、内容が8割方変わったという旨のエピソードを語っているんですよ。
一体何があったのでしょうか…?
今回は業火の向日葵の脚本が改変された事情について、見ていきたいと思います。
※ネタバレを含みます。未視聴の方は注意してください。
脚本の櫻井武晴が8割改変について語る
2017年に公開されたコナン映画シリーズ19作目の「業火の向日葵」の脚本を担当したのは櫻井武晴(さくらいたけはる)氏です。コナン映画シリーズでは17作目「絶海の探偵」以来の担当です。
主にミステリードラマの脚本担当として有名な人物です。
その櫻井武晴氏が、インタビューで脚本が8割方別の物になっていたことを語っています。そのインタビューが載っているのが「名探偵コナン 20years シネマガイド」です。
業火の向日葵の脚本の尺は1時間オーバーだった
インタビューで櫻井武晴氏は、
まず尺(しゃく)はちょっと短めに書きました。それでも1時間オーバーと言われて…
と語っています。
尺(しゃく)というのは映画の長さのことです。コナン映画だとだいたい100分前後になっています。
一般的には尺が長すぎると1日あたりの上映回数が減るため、尺が長すぎるのは好ましくないとされています。
なぜなら、上映回数が減るとそれだけ観客が映画を観る機会が減り、売り上げの減少につながるからです。
というわけで元の脚本を大きく変更する必要が出てきたのでしょう。
業火の向日葵の上映時間は112分ですから、元の脚本の状態だと172分くらいあったことになります。
172分のストーリーから112分にうまくまとめるのは大変そうですね…
また、「名探偵コナン 20years シネマガイド」のインタビューでは、同じ分量でもアニメのほうが実写よりも長くなってしまうと語っています。
櫻井氏はもともと実写ドラマの脚本担当だったために、長くなってしまったのでしょうね。
ミステリー要素が大幅にカットされる
櫻井氏はこのインタビューでコナン映画シリーズ17作品目「絶海の探偵」のときの脚本についても触れています。
さらに、出来上がってみるとミステリー部分よりも、キャラクタードラマやアクションが僕の脚本より増えていて、ジャンルとしてはミステリーというよりサスペンスとアクションになっていました。
櫻井氏は「絶海の探偵」の際にミステリーというジャンルで脚本を書いていたが、サスペンスとアクションに変わっていたことを明かしています。
「絶海の探偵」について詳しくは以下の記事でまとめています。
そして、以下のインタビューでは、「業火の向日葵」の脚本でも「大人の事情があってミステリー要素が使えない事態が起きた」と話しています。
【インタビュー】劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』制作秘話を脚本家・櫻井武晴が語る(外部リンク)
尺が長いからその分をカットしただけでなく、ミステリー要素を意図的にカットしたということですね。
静野監督の意向もありアクション要素が多くなった?
上記のインタビューでは、近年の劇場版名探偵コナンの興行的な成功についても触れられています。
そこで、櫻井氏は「業火の向日葵」の監督でもある静野孔文(しずのこうぶん)氏について以下のように語っています。
僕は当初、『名探偵コナン』はミステリーだと思ってチームに参加したんですが、劇場版に限っては、みんながアクションを望んでいるという空気もあったんですね。
その空気感を正確にピックアップして興行成績につなげたのが静野さんです。古参のファンから非難されることも半ば覚悟したうえで、より多くのお客さんに間口を広げていった。その姿勢は見習うべき点が多く、エンタメ界における職人そのものだと思います。
この話は「業火の向日葵」というよりもコナン映画シリーズ全体について語っているものですが、「業火の向日葵」でアクション要素が増えた一因に静野監督の影響があった可能性は高いでしょう。
静野監督は劇場版名探偵コナン15作目「沈黙の15分」から21作目「から紅の恋歌」までの7作品で監督を務めています。
賛否はありますが、アクション要素を増やした静野監督のコナン映画で興行収入が伸びたのは事実ですから映画製作側としては成功ではないでしょうか。
実際、業火の向日葵は2015年当時、コナン映画シリーズの興行収入の最高額を更新しています。(業火の向日葵の興行収入は44億8000万)
小説版(ノベライズ版)では映画の補足がある
映画版だと元の脚本から改変されているため、説明が少なくわかりずらいシーンもありますが、小説版ではその辺が記載されています。
ただし、Amazonレビューによると電子版だとそれがカットされているため、もし購入するなら、中古の商品や本屋で中身が初版であることを確認してからの購入推奨です。
業火の向日葵の脚本についての口コミ
業火の向日葵の脚本については、ファンの間でもいろいろ言われていますよね。
というわけでその口コミを見てみました。
Amazonレビュー:業火の向日葵の脚本について
まず、Amazonレビューですが、脚本について書いていたレビューが5件ありました。
レビューについてざっくりまとめると
- 櫻井さんの脚本で映画を観たかった
- 脚本を改変したので話がよくわからない
という意見となっていました。このレビューは脚本が改変されたという裏事情を知った上での意見ということで相当な櫻井ファンであることは間違いないでしょう。
やはり、脚本を改変したことへの評価はよくないようです。
Twitterの意見:業火の向日葵の脚本について
Twitterの意見で興味深いものもいくつか見てみます。
脚本家って大変な職業だな。監督やプロデューサーとかの意向に沿って話書いて、その内容が不評だと批判の矢面に立たされて。名探偵コナンの『業火の向日葵』だったかな、脚本家や原作者がトリックやら伏線やら色々盛り込んだのに、本編では跡形もなかった、というのは
— M Y (@TBCN_N3000) June 23, 2016
この意見も業火の向日葵の脚本についての事情を知った方ですね。
業火の向日葵は元の脚本から8割改変されたにもかかわらず、批判を受ける理不尽さを嘆いています。
業火の向日葵のWikipediaがめっちゃおもろい。脚本がああなった顛末がまとめられてて笑ってしまう。
— 愉月 (@yutsuki_c) January 10, 2020
脚本についての事情は大々的に表に出ているわけではないですから、このように後々になって知る方もいるでしょうね。
このツイートでははっきりとは述べられていませんが、潜在的に脚本に対しての不満や違和感をもっていた方だと思われます。
業火の向日葵の脚本についてまとめ
今回は業火の向日葵の脚本が8割方改変されたということについてまとめました。脚本担当の櫻井武晴氏が「8割方僕の脚本じゃなかった」と述べているため、事実のようです。
そして、8割方改変されてしまった理由は
- 元の脚本の尺が1時間オーバーだった
- ミステリー要素よりもアクションを重視した
というところにあるようですね。
脚本が尺の長さの問題で改変されたという部分に関しては仕方がないと言えそうです。
しかし、アクションを重視した部分については映画の内容自体を大幅に変える結果となったため、不評も多いようです。
ですが、映画の製作側としても興行収入を考えてのことでしょうから、櫻井氏には気の毒かもしれませんが、やむなしだったのかもしれません。
例えば、幼い子供にミステリー全開の映画を見せても、「なんかよくわからない」などと感触が悪いかもしれませんからね…
コナン映画シリーズも公開当時の2017年時点で19作目。視聴者層も幅広くなっているでしょうから、どの視聴者層に対しても満足させるという難しさはあると思います。
櫻井武晴氏が脚本を手掛けた他のコナン映画についても、小ネタなどをまとめてますのでよかったらこちらも覗いてみてください。